昨年、BTG出版で『SEEKING QUIETNESS』という写真集を制作・出版された宗玄浩さん。写真家として活動されている宗玄さんに、写真集制作の感想を伺いました。
── 今回は昨年出版した写真集についてのお話を伺えればと思います。まず、なぜ写真集を作ろうと思ったのかを教えてください。
宗玄 昔から写真集を作りたいという夢があったんですよね。BEHIND the GALLERYで個展のお話をいただいて、せっかく写真展をやるなら今まで積み上げてきたものが残る形にできるよう、写真集も制作したいなと考えました。
── たしかに写真展があったのは作る理由として大きいですよね。世界旅写真展(以下「世界旅」)をきっかけに個展のお声がけをさせていただきましたが、世界旅という機会がなくても個展は開いていましたか?
宗玄 そうですね、チャンスがあれば個展をしたいなと思っていたので、世界旅はひとつのきっかけになりました。世界旅で選んでいただいたのはキューバで撮影した作品でしたが、自分の中でキューバの写真は不完全な気がしていたんです。でも、中村さんや色々な方に写真を観ていただいたことで、「もう一度キューバを撮影しに行こう」「そして展示をしよう」と思うことができました。帰国後、個展のお話をいただいて、展示構成がある程度見えてきた段階で写真集作りの話がでたんですよね。
── そうでしたね。実際に写真集を作って、展示のときに写真集があってよかったなと感じたことはありましたか? 同時にあることの良さといいますか。
宗玄 自分の知人ではなく、初めてお会いするような方が展示を観に来てくださって、帰りがけに写真集を買ってくださったんです。そのときに、ふらっと入った展示だけでは過ぎていってしまう刹那的なものが、写真集があることでその人の中で形として残っていくということを実感しました。それは自分のなかでとても嬉しいことでしたし、同時にありがたくもありました。写真集があることで写真展自体もより豊かなものになったと思います。
── 持ち帰ってまた作品に触れることができる、留めておいておけるのはいいですよね。
宗玄 作品の点数も展示より多くみせることができますし、展示だけでは表現しきれない部分も写真集と合わせてひとつの形として表現できたのではないかなと思っています。
── 写真集制作の期間はいかがでしたか?
宗玄 僕はほとんどお任せしていたのもあると思いますが、思っていたよりも早かったですね。構成、デザイン、装丁から本当に全部やっていただいて、それでこれだけの仕上がりなるんだと驚きました。ステートメントなど文章に関してもサポートいただたいたのでありがたかったです。
── ステートメントは難しかったですか?
宗玄 難しいですね。なんとなくぼんやりと「こういう写真を撮りたい、こういうものを作りたい」というのは自分の中にあるのですが、それを言語化するのはやはり難しいです。それでも、こちらでは対話をしながら一緒に作っていただけたので本当によかったと思っています。
── こちらの提案内容についてはいかがでしたか?(正直にお答えいただいて大丈夫です!)
宗玄 ステートメントから、写真構成、デザインに印刷など、対話をしながら提案いただけたので安心してお任せできました。また、せっかくこういう機会を作っていただいたので、提案いただいたものである程度やってみたいなという気持ちも僕の中ではありました。結果、すごく満足しています。
── そう仰っていただけてよかったです。蔵本についてはいかがでしょうか?
宗玄 「紙質にこだわりたいです」と仰っていただいて、実際それもすごくよかったです。初めて手にしたときは本当に感動しましたね。めちゃくちゃ格好いいなと。自分の人生の中で特別な瞬間としてずっと残っています。
── とても光栄です。宗玄さんの記憶の中にそうして印象強く残る瞬間を一緒に作り上げることができて、私たちもとても嬉しく思います。こちらこそ、ありがとうございます。
── 写真を組む作業はいかがでしたか?
宗玄 写真を組む作業も本当に難しいですよね。写真を撮ること、選ぶこと、プリントすることって、全て大切で全て難しい。特に「写真を組む」ことは訓練しないとできないと思います。なので、こうして客観的な視点も含めてプロの方に選んでいただけてよかったです。お任せしたことでより学びが多く良い経験になりました。自分ひとりで考えていたら気付かなかったであろうことへの気付きも与えてもらえましたね。
── 費用的な印象はいかがでしょうか?
宗玄 もちろん、とても満足しています。正直この金額でいいのかな… という気持ちもありました。あと、少部数からでも作れるので、予算的な安心感もありました。無理にたくさん作って流通させたとしても、手元に戻ってきてしまったりすると思いますので。
── 写真集の中で特に気にいってる箇所はありますか?
宗玄 僕自身は全て気に入ってます。なかでも、中村さんが書いてくださった解説がわかりやすくて気に入っていますね。自分では言いにくいことなどもまとめてくださっているので、その点もとてもありがたかったです。
── 写真集はその後なにかの役にたっていますか?
宗玄 名刺代わりになりますよね。写真集で自己紹介ができる。あとは、話のきっかけになりやすいなとも思いました。何かのときに写真集を置いてもらえないかと提案することもできますし、展示をしたいときも話がしやすいなと思います。
── 最後に、写真集を作ろうか悩んでいる読者の方へメッセージをお願いします。
宗玄 写真展をしたり写真集を作ったり、作品をひとつの形にまとめることは、自分の中でよい区切りになります。特に写真集は、自分の知らないところで自分の知らない人が自分の作品をみてくれるきっかけになると思うんです。それは本当に写真集の良さですよね。
写真を撮っている人の中で「写真集としてまとめたい」という人は一定数いると思うんです。BEHIND the GALLERYでは打ち合わせを重ねながら完成度の高い写真集を作ってくださるので、「作りたいな」と思っている方にはぜひ問い合わせてみてほしいです。
── 本日はありがとうございました! また作家活動や写真のお話も聞かせてください今後のご活躍も期待しています!
▼宗玄浩 HIROSHI SOGEN
1983年富山県出身。写真家。2010年から1年半の世界一周を経て、2019年現在 50カ国以上へ滞在。国内外の旅を撮影し、発表している。
ニッコールフォトコンテスト入選2回。キューバの写真が第4回世界旅写真展にて選出される。また、旅の文章や写真を公募し、一冊の本を作成、展示会を開催する企画「タビノコトバ」を主催し、審査員も務めている。
・個展「Usualdays」(2015 年・横浜市民ギャラリー)
・アイデムフォトギャラリー主催・プロキオンフォース選出
個展「旅と夢」(2018 年・アイデムフォトギャラリー)
・Behind the gallery 主催・4 回世界旅写真展選出
選出展「第 4 回世界旅写真展」(2019 年・Behind the gallery)
・タビノコトバ主催・審査員(2016 年・2018 年)