【第一回公募世界旅写真展 審査総評】
昨年10月より作品応募を行っていました旅がテーマの公募コンテスト”世界旅写真展”の審査が当ギャラリーにて行われました。こちらで審査風景と2名の審査員による総評を公開しています。
審査日|2013年12月27日(金)
応募期間|2013年10月21日(月)~2013年12月15日
[THE DAY|当日]
集まった審査員とスタッフがはじめに見たのは1000点を超える応募作品の山。予想を上回る応募に感激した様子で眺めるお2人の審査員。一面に並んだ作品の数に圧倒されていたようでした。
[THE WAY|方法]
選考は3段階。124点を半分にした62点の中から1人20点を選ぶこと2回、これで45点に絞られました。二次審査は1人15点を選び残った18点が最終選考へ。そして最終的に10点の入選者が決まりました。
[THE FLOW|時間]
午前11時〜午後15時にかけて審査は行われました。一次選考にじっくりと時間をかけて終わったのは昼過ぎ、二次選考は思いの外スムーズに。最終選考は議論を交わしながら1時間ほどかけて行われました。
[THE RULE|基準]
テーマは「旅」ですが、広義に「人生の旅」や「時間への旅」も含んでいました。第一回であることもあり明確な審査基準は無かったのですが、不思議とお2人の選ぶ基準はかなり近いものでした。
〈審査総評〉
2015年 第二回世界旅写真展 審査員
安藤夏樹(以下A)/ 中村風詩人(以下K)
K|審査総評です、全体的にいかがでしたか?
A|僕は編集者だから今回は「見せるための作品」というだけでなく、「仕事として成り立つ写真かどうか」ということも考えて審査をしました。
K|プロフェッショナルとしてのカメラマンとアーティストとしての写真家。今回はその境界線の引き方にも注目したいです。
A|今回の公募展は1枚でも応募が可能ですが、それが数百枚撮った中で偶然撮れた1枚かもしれません。あるいは数千枚の中にたまたま1枚だけ奇跡的なものがあったとか。仕事での撮影は決して撮り逃しが許されない。失敗は有り得ないのです。
K|そういう点で「作品」と「仕事」の線引きをするという。
A|自分が選んだ作家さんにはいつか仕事を頼めるかもしれない、そんな意気込みもあるんです。中村さんの代わりになるような笑
K|勘弁してください笑。それはそうと全体的なレベルとしてはいかがでしたか。
A|実は正直言うと、こんなに多くの作品が集まるとは思っていませんでした。言い方は悪いですが、どうしようもないような作品ばかりになって展示が成り立たないのでは、ということまで想像しましたよ。
K|私も10枚しか来なくて全員入選だったらどうしようといった不安も頭をよぎりました、とにかく第一回で実績がない訳ですし。今回は良い意味でそれが裏切られました。エントリーが197名、応募者が124名、そして応募総数は1000枚近くと見応えは想像以上。審査が終わった今は腕も筋肉痛になりそうなほどです。
A|見応えは充分にありました。全体的なレベルも高い。それでも「旅」というテーマだからか、ビジュアルはかなり似通ったものが多かったように思えます。もっと自由で良いと思いました。絵はがきのような整った構図の風景写真、あるいは上手いから作為的に見えてしまうような情景写真・・・
K|どこか既視感があるような。何か印象的だったものはありますか。
A|中でもご夫婦を写した記念写真なんかは印象的でした。誰かのために撮った作為は感じないし、何より「何が写したいのか」が明確に写っている。またそれが伝わる作品に仕上がっていると思いました。
K|確かに。残念ながらその作品は「公開NG」と回答を頂いているのでお見せ出来ないのですが、とても私的な旅を写したもので強いインパクトがあった。実際最終選考まで残っていました。
A|私的な旅の最たるものは、やはり荒木さんの「センチメンタルな旅」でしょうね。
K|間違い有りません。今回そういったテイストのものは少なかったですが。公募を始める前には、アーヴィング・ペンの「煙草の吸い殻」みたいな「旅のかけらをスタジオで静物化させたようなもの」も来るかと思いましたが、そういったものは無かったですね。
A|あるいは確かイギリスで出版された写真集だったと思うのですが、ハズレ馬券だけ撮った作品のようなもの。これは面白くて、ハズレ馬券の丸め方が人それぞれに違うらしいんですね、それでその違いを淡々と丸まった馬券だけ撮影した作品を作った写真家がいる。一見旅とは全く関係ないものを撮ることで、その国、その場所の空気が撮れることもあると思います。こういう自由な作品があっても良いですね。
K|それは知りませんでした。まったく自由な発想が面白い。その僅かな違いがどう写真に現れるのかにも興味がありますね。それもその写真家が見た立派な旅のワンシーン・・・。そういえば今回はデジタルが多かったように思えます。
A|半分以上、いやほとんどがデジタルだったと思いますよ。もうフィルムを触ったことのない世代がどんどん出てきているからね。時代を反映していて面白い。
K|そういう中でのフィルムの良さっていうのはやっぱりありましたね。二人で印画紙の作品を見て「あぁ、バライタ」と呟いていたのは印象深かった。
A|沢山送ってきてくれた学生さんの作品ですね。フィルムの安心感というか。それなりに時間をかけられたものってやっぱり良いよね。
K|デジタルで撮られた「バライタ調」より、純粋な「バライタ」に心をひかれるのは自然なことです。見ていて不自然なほど鮮やかだったり、作られたように鮮明だったものは少しバイアスがかかってしまいました。一方で高感度などを駆使した夜景写真や露出の差をカバーする星景写真などデジタルならではのものは今まで見られなかった世界を写していて面白かった。
A|そういった中でも新しい撮り方に挑戦したものももっと見てみたかったです。見慣れたような無難なものでもなければ、誰かの真似でもなく・・・。難しいですけれどね。
K|それは難しい。結果的に誰かの作品と類似していることで「それは真似だ」言われることは、私は決して悪いことではないと思っています。考えて表現して、結果として似たものが出来上がる。誰々の真似だと叩かれるよりも、むしろそれは一種の誉め言葉と受け取っても良いくらい。もちろん初めから真似をしようとしてばかりは論外ですけれど。
A|そういう視点では見てなかったけど、審査していて「中村さんらしい選別だな」と思いましたよ。好きそうだというか。やっぱり個人的な好みというのは少なからず出ますね。
K|同感です。私も「安藤さんらしいセレクトだな」と何度か振り返って思っていました。
A|そうだ、一次は64人から20人を選ぶ審査だったけど、お互い10人くらいの作品を選ぶのはすぐに決まりましたね。意外に時間がかかったのはその後の10人でした。やっぱり比べると特別うまかったり、訴えてくるものってすぐに決まってくる。
K|パッと決まった、いわば上位の選考進出者は二次選考でもそのインパクトを覚えてるから、二次選考は早かったですね。一次ですぐに選んだ作品を選出すればいい。始まった時には決まってましたからね。
A|そして最終審査。それまでの「選んでいく審査」から、「削っていく審査」に変わりました。全員入選させたいくらいだけど人数に限りがあるから外していく、これは難しかった。
K|分かります。本当に最終選考では全て入選させたいくらい素晴らしい作品が並んでいました。本当に応募の時にはここまでのレベルは考えていませんでした。来年は審査員こそ変わるかもしれませんが、応募条件などはほぼ同条件にして開催も予定しています。何か応募者に一言ありますか。
A|もっと自由でいい。それに尽きる。
K|自由・・・。まさに旅を感じるお言葉です。来年のことも考えているだけでワクワクします。その前に3月の第一回世界旅写真展の展示が楽しみでなりませんが。それでは展示期間もよろしくお願いします。
A|展示も楽しみですね。よろしくお願いします。
※応募者の方々への審査結果については2014年1月後半に順次郵送にてご連絡させていただきます。