今年の9月、BTG出版から『光と色彩のパレット』というアートブックを出版されたPrius Shotaさん。アートフォトグラファーとして活動されているPriusさんに、作品への想いや制作の感想を伺いました。
── アートブックの出版おめでとうございます。今回の「心に灯す色彩のパレット」というタイトルに込めた想いを教えてください。
Prius ありがとうございます。タイトルについては、5年前にインスタを始めたのが一番最初の始まりなんです。そのときに他の写真家さんの投稿をたくさん見ていたのですが、それがきっかけとなって、私も何かテーマを作って写真に統一感を持たせたいと思うようになりました。自分には何ができるだろうと考えていく中で、昔から「光と色彩」が好きだったので、それを写真で絵画のように表現できないかなと考えるようになりました。そして、色々試していく中で、写真をキャンバスに例えて自由に色をのせていくという今のスタイルにたどり着きました。でも、自己満足ではなく、見てくださる方に心の癒しを届けたい、という想いから「心に灯す」というフレーズを選びました。
── どういうときに作品制作のアイディアを思い付きますか? 制作にあたり気をつけているポイントやこだわりなどはありますか?
Prius 毎日何気ない日常を過ごすにあたって、美しい瞬間は色々なところに散りばめられていると思うんです。そうした瞬間を宝探しのように拾い集めていくのが大好きで。特別意識しているというわけではないのですが、アンテナは常にはっています。こういう瞬間いいな、というのを日頃からインプットしたり、偶然の出会いを探したり。何か求めて探しにいくときもあれば、何も考えずに偶然の出会いを待つこともあります。あとは、音楽も好きでよく聴いているので、そういうところから作品のインスピレーションを得たりもしますね。
── 他の芸術から影響を受けることってありますよね。写真集見るより小説を読んだり、写真展をみるより絵画展をみる方がインスピレーションが湧いてくることもあるので、すごくわかります。
── 今回のアートブックでは、写真と言葉の組み合わせが印象的ですが、写真を撮影している段階ですでにある程度言葉が決まっているのでしょうか? それとも、制作中や制作後に?
Prius 言葉は作品を制作している最中に「この作品にはこのメッセージをこめたいな」と考えることもありますし、「どんな言葉をのせたいかな」と制作後に考えることも多いです。今回のアートブックに載せている言葉はすべて作品の制作後に付けた言葉です。最近は言葉と写真をセットで発表すると自分の中で決めているので、新作を作るときには必ず言葉も一緒に考えるようにしています。
── プリウスさんが本を出そうと思ったきっかけを教えてください。
Prius 以前から個展をよく開かせていただているのですが、2020年にコロナウイルスの問題がおこってから、遠方からお越しいただいていた方が来れなくなってしまったんです。そのときに「今自分に何ができるだろう」と考えて、それがこの本を出すきっかけとなりました。お家の中でも自分の作品を楽しんでいただきたい、そのためにはどうしたらいいだろうという想いがどんどん強くなっていったんです。SNSでも毎日のように投稿していますが、それだと私が想う「癒し」が伝わりにくいのではないかな、と。ちゃんとした本を作って、その本と一緒にあたたかい飲み物を飲みながら癒しの時間を楽しんでもらいたい、それがこの本を作ろうと思った理由です。
── なぜBTGにお問い合わせくださったのですか?
Prius 本の企画書を練り上げて、色々な出版社に連絡したのですが、全滅でした。これはもうクラウドファンディングをするしかないなという気持ちになって。失敗するかもしれないけれど、一歩踏み出してみようと思ったんです。そんな中で自費出版をしている会社さんにも色々問い合わせをして、BEHIND the GALLERYのHPにたどり着きました。
── 実際にBTGでアートブックを制作していかがでしたか?(BTGの印象はいかがでしたか?)
Prius 何かこういう大きなプロジェクトをやるとなると、数カ月間ともに走っていくことになるので、私は「人」が一番大事だと感じています。事前に大きな会社さんや色々な出版社にも連絡しましたが、一緒にやっていきたいという気持ちにはあまりなれなかったんです。私の中では、親身に話を聞いてくださったりだとか、私自身が接しやすいなと感じるお人柄が大切でした。BTGのおふたりに初めてお会いしたときは、「この人達と一緒にやっていきたい!」と素直に思えました。実際に一緒に制作を進めていく中でも、毎回お会いするとすごく楽しいですし、私のこだわりが強い部分だったり、逆にポンコツな部分をすべて受け入れていただきながら、本当にたくさんサポートしていただきました。
── ありがとうございます。プリウスさんの熱意に、「応援したい!」という気持ちが強く生まれました。私たちもとても良い刺激を受けました。
── 構成やレイアウト、紙の種類やサイズなど、本を作る際に決めなければいけないことはたくさんありますが、仕上がりはいかがでしょう?(初めて手にとったときのお気持ちなど)
Prius いざ本を形にするって本当に時間がかかるんだな、決断の連続だなということを思いました。紙質にしても表紙のデザインにしても、構成や文章はどうするかなど… 本当にたくさん決めることがあります。でもそれ自体はとても楽しかったです。ひとつひとつ決めていく中で、自分のゆずれない部分が結構あったんですけど、そこも全部汲み取って良い形に仕上げてくださったので、感謝しています。たくさんある作品を選定するところから、選んだ作品の組み方など、わからない部分も丁寧にサポートいただけたので、本の仕上がりは自分自身が思い描いたもの以上でした。これが商業出版だったら、こんなにとことんこだわって納得いくものは作れなかっただろうなと思っています。
── 費用感についてはいかがでしょうか?
Prius 今回はクラウドファンディングですが、自費出版で色々なところにお見積もりとらせていただき、金額面だけで比較してもとても良心的なのかなという印象です。仮に他の会社さんと同じ料金だったとしても、おふたりがとにかく親身に相談にのってくださって、サポートしてくださったので、それは他ではそうはいかなかったのではないかなと思います。こちらでお願いしてよかったです。
── ありがとうございます。光栄です。では最後に、アートブックを作ろうか悩んでいる読者の方へメッセージをお願いします。
Prius 今の時代は何でもデジタルですよね。それはとても便利なことですが、その一方で私たちはアナログな人間なので、写真集という紙でできた一冊の本は、ダイレクトに五感に訴えかけてくる良さがあると思います。SNSだと流れがとてもはやいので、作品をじっくりみてもらえることってあまりないと思うんです。でも、こうして作品を本というひとつの形にすることで、手にとってくださったその方のお時間と共に、作品の世界観をじっくり堪能してもらえるのではないかなと思います。それによって、より作家としての想いも伝わりやすくなるのではないでしょうか。それは作家としてとても大きな価値になると思います。
── 本日はありがとうございました。今後のご活躍も期待しています!
▼Prius Shota さん
1991年生まれ。大阪府出身・東京都在住のアーティスト。HSP、トランスジェンダー。
芸術に癒されてきた原体験と印象派からインスパイアを受け、2016年1月より『心に灯す光と色彩のパレット』のテーマで、幻想的な心象風景: フォトアートの創作活動を開始。一枚の写真に”淡い光と豊かな色彩の魔法”をミルフィーユのように重ねていく技法は、観る人に日常の違った美しさと心の安らぎを伝える。2018年4月から東京や横浜、京都・大阪と精力的に個展開催。2021年9月、初の著書『心に灯す光と色彩のパレット』出版。