■『樹海』山田紀利 写真集
発売日:2023年
価格:-
総合編集:behind the gallery
出版:behind the gallery
仕様:本文126ページ+カバー
■懐かしさと畏怖の念を抱く”樹海”をテーマに
長い年月をかけて撮影し続けた作品を一冊にまとめた
確かに「そこにいる」、残像にも近い光を捉えて
静岡県在住の山田さんは、幼少期も富士の樹海で遊ぶことがあった。大学入学時に上京、20代を東京で過ごした後に静岡に戻ってきた。すると遊び場のように感じていた富士の樹海に、懐かしさと同時に畏怖の念を抱いている自分に気付く。懐かしさと恐れが同居した存在の正体は、自分の中にある何なのかと考えるようになった。やがて「ここには自分がもうひとり居て、自分を見てくれている」と感じ始めたのだという。木々の間から視線を感じるとそこには誰もいない。これが他人なら恐怖心を感じるのだが、自分自身だと安寧を感じるというのも頷ける。「そこにいる」、そう感じて切ったシャッターはゆうに5000枚を超える。写真にその存在は写ってはいないが、確かに「そこにいた」のだろう。残像にも近い光が、あるはずのないゆがみを写真に与えている。この樹木の海の中で、山田さんの残影は今この時も漂っているのかもしれない。