作品を考え配置が決まった頃、日程が迫って思い出すのが「キャプション」の存在、果たしてキャプションは必要なのでしょうか。今回はキャプションの意味や作り方についてまとめています。
キャプションの必要性
まず始めにギャラリーとしての意見
キャプションは必要です。ただし不可欠ではありません。実際、一定数の方は作品に対して何も添付していません。それでも成り立ちますが、重ねて書かせていただくと、私はキャプションはあった方がいい、と思っています。
キャプションが無くても表現は出来るが・・・
写真は雄弁な作品です。画もしかり。ビジュアルから多くのことを伝えることができるメディアです。そのため作家さんは、空間を考えた際に、その雄弁な作品を使ってどう表現するかに集中します。そして出来上がった展示を見て、多くの人は「作家が意図している表現」とは違うことを受け取ります。もちろんそれで当然なのですが、ある意味で来場者は作家の意図を理解していないことが分かります。
なぜキャプションが必要か
「キャプションがあった方が良い」と前述したのは、ギャラリーの意見でもありますが、それ以上にこれは来場者の意見でもあります。見に来た方は、興味をもった作品のことをもっと知りたいと思いますが、キャプションが無ければ質問をしなければなりません。ですが躊躇せずに質問を出来る人というのは中でも少数派になります。キャプションは自己表現のひとつですが、何よりそれは来場者のためのご案内でもあるのです。
キャプションの種類
CASE1:タイトルのみ
作品のタイトルのみを記載する形式のキャプションです。多くの場合で大変有効です。何より文字が多すぎると作品そのものの展覧に邪魔になることがあります。そういった意味でも、一言のキャプション(タイトル)が付加されているのは美しさと情報を兼ね備えるものと言えます。単純なものでは「撮影地」や「感情を表す単語1つ」などでも十分に成り立ちます。
CASE2:タイトル+キャプション
最も長くなる形式は、「一言のタイトルと数行のキャプション」で表すものです。これは協賛企業がつくもので説明を付加した方が効果的であったり、テーマが「日本の世界遺産」など分かりやすい場合に、「登録年月日・場所・種類」などを記した上で「説明文」を書くと、より深いものに仕上げることが出来ます。文章量が多いと空間に影響もでますが、挨拶パネルなどと全体的な統一感をもって仕上げることでむしろプラスの要素にすることも可能です。
CASE3:キャプションのみ
こちらも一般的なケースです。一言ではなく、作品を説明するように文章を書きます。2〜3行から時には5行程度のものもあるでしょう。ただ文章が多くなる場合は、1つの作品の前で来場者が立ち止まってしまい次の人が見られず流れが止まってしまう恐れもあります。長くなるキャプションの場合には別紙にしてお渡しするなど考慮も必要です。
効果的なキャプションの書き方
作品のビジュアルから分からないことを書く
例えば夏にダウンを着ている女性を撮った写真があるとします。その写真をみた人は、「これは冬に撮られたものだ」とビジュアルから理解するでしょう。それは冬服のダウンを着ているからです。しかし作者が表現したかったのは、真夏にダウンを着ている違和感を写したかったかもしれません。それは「作品からでは分からない作品の魅力」です。キャプションの基本は、作品からは読み取ることができない情報を付加することです。
キャプションにおける失敗
完全な失敗とは言いたくないのですが、先ほどの作品から読み取ることが出来ない事を書くことが良い、とお伝えしました。その逆を考えてみると、作品から読み取れることを書くことは失敗と言えると思います。例えば「美しい朝日に照らされた富士山の写真」があるとします。この写真のキャプションに、「美しい朝日に照らされた富士山」と書くことは決して上手とは言えません。しかし、多くの人がこのような見たままの文章を書いてしまいがちなのも事実です。
共通の表記で書く
作品全点共通のサイズ、フォント、書き方が望ましいと思います。外国の方が通りすがりに見に来るギャラリーだったら英語表記も欲しいですし、撮影地をよく聞かれそうな全世界を写した写真展なら、全部共通して国名は欲しいところです。回顧展であれば撮影年も必要になるかもしれません。その場合には当初のレイアウトから「撮影年・撮影場所」は共通事項として明記するほうがまとまりが生まれるキャプションになります。
キャプションの製作方法
基本的にキャプションは自作するケースがほとんどです。インクジェットプリンターの普及もそうですが、まずは印刷会社やラボに発注しにくいサイズだからではないでしょうか。※もちろんそれでも発注は可能ですし多くのラボが対応してくれます。が、割高です。
自宅で出力してプラスアルファの一手間
まずはインクジェットで出力を考えましょう。大切なことは紙選びです。ぺらぺらのコピー用紙ではなく、しっかりとした厚紙が最適です。写真用紙、マットペーパー、グロス、ファインアート、そのどれもがキャプションになりえます。ただ、そのまま貼るのでは芸がないので一手間を加えることで魅力的なものになることも忘れてはいけません。展示物としての作品価値は求めていませんが、空間の美しさの減点要素にはなってほしくないものです。
- グロスペーパーをハレパネで仕上げる
- ファインアートペーパーに虫ピンで浮かせる
- 写真用紙に薄めのアクリルブロックを付ける
- マットペーパーに白ヌキの文字にする
- 四角ではない形に仕上げる(斜めにカットするなど)
- ベースに縁取りのように色紙を置く
- 複数の作品をまとめたキャプションを大きめに置く
- 元々色紙に印刷をして使用する
印刷のレイアウトについて
印刷データを実際に作るには思ったより難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。問題は用紙を切った際に、キャプションの文字が中央にくるかというポイントです。そのためのカットのガイドの役割をしてくれるのが、トンボ(トリムマーク)です。沢山平行垂直にトリムマークを並べることで切る際にも一直線に切っていくことが可能です。何かの図形のようにも見えますが、上記の写真がキャプションを垂直並列に並べていった切る前のプリント時のものです。
キャプションの結論
キャプションはあった方が良いと考えています。キャプションを作らない場合に、「なんでキャプションがないの?」と聞かれて、意味のある回答が出来る場合には無くても大丈夫です。が、正確な理由が思いつかないケースが多いのも事実です。無い方の多くは「時間がなくなって手が回らなかった」という回答も多く耳にします。そうならないためにも展示はできる限り早い段階から作り始めるのが大事になってくるのをお忘れなく。