展示設計をするにあたってかならず考える必要があること。
ここでは「額装:フォトアクリル」について考えています。
額装の方法は展示をするにあたって必ず考えなければならない登竜門です。フレームにいれて芸術的に見せるか、あるいは貼りっぱなしにしてワイルドに表現するのか。今回は数ある額装方法の中から「フォトアクリル」についての考察です。
【メリットとデメリット】
+:アクリルの透明感は絶対的な美しさ
※絶対的だがメタルプリントは近い風合いをもつ
+:プリントとしての耐久性はあがる
+:一般の人への認知度はまだまだで見た時の新鮮さがある
+:1m以下など中くらいのサイズまでは思ったより軽い
+:木製フレームよりも薄いため多点数の際の輸送はしやすい
+:フレームのカカリがいらないため、作品がクワレない。
※落ちないようにするため木製などは普通5mm程度作品の四方がトリムされる。
+:形が自由なため円形や三角形なども対応できる
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-:アクリルのみなのに価格が普通のフレームと変わらず高い
-:アクリルの角が欠けやすく傷も入りやすい
※売れた際に現物が傷ついていて再出力となるケースも多い
-:1500mmなどは重く凶器のような取り扱いになりかねない
※女性一人での1500mm作品は取り扱いは難しい
透明感と一体感
遠くからでもみた瞬間にフォトアクリルしか発することのできない透明感、輝くような魅力を持たせてくれる。壁から透明な写真がふっと浮いているように見えるためとにかく美しい。思い通りのサイズにでき、額縁のように四方から追い込まれないため、作品本来のサイズを極限まで見せることができるのも特有。視野率100%のファインダーに近い感覚か、作品本来の一体感はフォトアクリルだけに許された芸術性とも言えるほど。
アクリルの厚さは3mmと5mm、イメージのサイズによって異なるが
作品サイズが小さい場合は薄いものでも問題ないが、展示が長くなる場合などはライトの熱や環境の湿度などでアクリル自体が伸縮したり割れたりする可能性もあるため、基本的には5mmのアクリルを使用するほうがアートピースとしては良い。とても小さい場合2L程度のサイズは極厚の30mmなどで制作を扱う会社もあり、直置きで立てることが可能な見せ方もある。
選べるのは光沢紙の一択、日程は十分に余裕を持たせる
アクリルを圧着させるため表面の平滑性が求められるため、マットペーパーなど風合いのあるものは基本不可。写真用紙(クリスタル系などは可)の一択となる。(一応写真用紙にマット加工を施してマットな風合いのフォトアクリルに仕上げることは可能)。加工業者によっては髪の毛が入ったところから空気が生まれた、あるいはインクのスポットの部分がぺこっと浮いてしまったなど、粗悪な圧着方法があることも良く聞くことがあるので、現場引き取りをできるだけ行ってその場で品質確認を正確に行い日程に余裕を持たせることが大事。額縁でもエアダスターで取りきれないチリが入ってしまうことがあるが、額縁なら開けてその場で出せるため再生産にはならない。フォトアクリルの場合、ヘコなどを発見すると再度プリント出力、業者わたし、フォトアクリル加工、というゼロからの工程になるためスケジュールには十分な余裕を見る必要性がある。
最大で1500mm程度だが異常に重く、すぐ角が欠ける。販売までを視野に入れると耐久性が極めて大きな問題
展示したプリントを販売する作家は多い。そこでアクリルの「傷が入りやすい」という最大の問題点がでてくる。輸送、展示、公開にはそれぞれ知らない間に小さな傷が入ることが多い。(大きい落下傷などは気づくが・・)。そこで販売の際にコレがほしい、と言われても作家としては完璧なもの、傷のないものを再出力したい気持ちになる。普通の木製額やアルミ額が、知らない間にカドが欠けた、という話はあまりないが、フォトアクリルでは、知らない間にカドがかける、なんていうことが良くある。耐久性についてしっかりと視野にいれた上で十分慎重に取り扱い、丁寧に梱包し、展示、販売まで行うことが大事だ。
金額は加工できる業者が限られていることから高め。フォトアクリルはどこでも対応してくれる額装方法ではなく、できる業者が限られている。以前はアクリル業者一社のみがやっていたため、どこでも受注してもその業者が行っていたと聞くが、今はいくつかの会社が行っている。
- フレームマン|ベストな品質とサービス。高いといわれるがフォトアクリルに関してはそんなことはないと思う。ただ問い合わせしないと値段が分からないのがプロ限定な雰囲気。でもベスト。
- FLAT LABO|変形にも対応している比較的新しめの会社。ビジネスライクすぎずにサービスにしてくれそう。弊社からはプリントオーダーしかしたことないが問題なし。
- 山ノ手写真|以前は学生人気。今は経営が変わり写真公社のビルの上階に移転。弊社からのオーダーで失敗2回あり。価格は安め。
- キンコース|小さいサイズはキンコースもやっているらしい。
- フジフィルム|加工ではないが似た風合いに仕上げる額縁を発売しているようだ。
フォトアクリルのような透明感を求めるなら他の方法は殆どない。しかし「メタルプリント」はその代替仕上げ方法のひとつにかろうじてあがる
フォトアクリルの絶対的な透明感は秀逸です。もし同じような効果を得ようと思うと超光沢紙(クリスタルフィルム・ホワイトフィルムなど)にプリントしたものをアルポリックやゲータフォームに下駄をつけて浮かせる方法が思いつきます。あとは近年アメリカから日本に入ってきて世界的に流行しはじめたメタルプリントも近い効果があります。(メタルプリントはその名の通り金属版に直接プリントをする方法)。個人的にはメタルプリントは四隅が丸く削られるのでフォトアクリルの方が好みですが。