写真展を開くまでの大事な工程を、ひとつひとつ順を追って説明しています。色々なウェブを比較するよりも1箇所で完結するように展示開催までを網羅しました。出来るだけ初めての方にも分かりやすくまとめるように心がけました。
大成に向けた大きな4つのサイクル
「PEPE」のサイクル
- Portfolio – (review – Book remake , sometimes Contest trial)
- Exhibition – small space Gallery
- Publish – not online, as a book , sometimes Contest trial
- Exhibition – large spaces, museum
- 1:ブックの製作 / グループ展への参加 / コンテスト応募
- 2:ギャラリーでの個展
- 3:作品集の出版
- 4:大きな会場での個展(美術館 / 百貨店 / パブリックスペースなど)
PEPEのサイクルを実践し延べ10万人の来場者を動員
2018年から2019年にかけ、このビハインドザギャラリーからのプロデュースで三越、キヤノンギャラリー、高島屋、東武百貨店など著名なスペースでの展示を成功させ、1展示延べ10万人の来場者を動員した経験から、展示の方法をまとめます。
STEP.1
ポートフォリオを作る
まずはポートフォリオの制作が大事です。これはカメラマンとして仕事をする上でも「履歴書よりブックは?」と言われるほどに大事なもので、日本語に言い換えれば「作品集のアルバム」のような物にあたります。
ここでひとつ思う事に、ポートフォリオは1つの物語を作るものではなく、現在の自分の作品のベストセレクションをまとめたものの意味合いが濃いことです。言うなればポートフォリオに物語がない場合も多く、ベストカットのブックということになります。本ページで指すポートフォリオは英語としてのPortfolio(=日本語のブックの意)としています。
写真は1枚の作品を単写真、複数枚のものを組写真と言います。当然1枚のものよりも組写真の方が多くの物語を構成することが出来ます。組写真の枚数は大抵が3枚ですが、さらにそれを広げていくことで完成されるのがブックと思っても良いかもしれません。1枚に広がりを持たせて3枚に、3枚のストーリーを肉付けしていくことで10枚の物語に、最終的には30枚で物語を作ったらポートフォリオが出来た。というような認識です。繰り返しますが、これはただ30枚のベストカットを並べたのではなく、何かしらのテーマに即した作品性をもつ一冊のブックのことです。
ポートフォリオこそが最初にして最大の難関
この初期段階とも思えるブックの完成というのは初めの壁でありながら、最大の壁と思って良いと思います。言い換えれば良いブックがあるなら今すぐ良い展示が出来ます。それくらいブック(portfolio)の完成度は大きな意味を持っています。
ポートフォリオの作り方
ではどのようなポートフォリオが良いのでしょうか。クリエイター最初で最大の壁、ここの説明はおざなりにする訳にはいきません。詳細は「ポートフォリオの作り方」という別ページに記していますのでご覧頂ければしっかりと把握できると思います。
ポートフォリオの製作中に同時進行させること
テーマを探したりと暗中模索の最中にもいくつも出来ることがあります。一般的なものだとベストカットが撮れたと思ったらコンテストに応募してみたり、ある程度枚数が貯まったらポートフォリオレビューに参加してみるなど意見を仰ぐなども、良いきっかけになります。意見を聞くことで誰しも一度は、他人はこんなにも自分と価値観が違うのかということに気づくことになると思います。下記のような同時進行させることのリストをみて気づくのが、どちらも結局はポートフォリオのクオリティをあげることにつながってくるということです。
- コンテストに出してみる
- ポートフォリオレビューにいく
- 写真集を見たりして比べてみる
- 展示を見に行き傾向をみてみる
- ポートフォリオの感想を知人に聞いている
- ポートフォリオの軸になる一枚を壁に飾ってみる
- 自分の写真を手札判で用意して他の人に組んでもらう
STEP.2
展示を行うまで
ポートフォリオが完成したら
完成したということは「ひとつのテーマでまとまった枚数の作品が出来た」ということです。人によってこの段階に一週間で辿り着く人もいれば、数年かける人もいます。撮り足していくときりがないので、まずは手元のもので締切を設定して作ってみるというのも、ひとつ良い方法です。こうして出来たポートフォリオから、次は見せる場所(展示会場)を選ぶ段階になります。
まずは知っている会場を候補にする
自分が行ったことのある会場は、同じようにふらっと同じような人が来てくれる可能性がある会場です。実際に場所も見ているため想像もしやすいかもしれません。ポートフォリオを見ながら展示できそうな点数を考えて会場の規模を割り出すのも大事な一歩です。
時間があればギャラリーめぐりをする
どこで展示をやっても同じようにはならないのがギャラリーの面白いところです。数多くの情報をみてエリアをしぼったりしながら候補になりそうなギャラリーを巡ってみるのも手です。ギャラリーは大きく分けて企画展のみを行う販売に特化したギャラリーと、販売は基本的に作家自身が行い作家は場所を借りる形式の貸しギャラリーとにわかれます。経歴がある作家は別にして、一般的にはまずはレンタルギャラリー(貸しギャラリー)から展示を始めるというケースが多いと思います。
STEP.3
良い展示スペースの探し方
候補1:メーカーギャラリー
まず思い浮かぶのはカメラメーカーギャラリーです。有名なところでキヤノンギャラリー・ニコンサロン・フジフィルムスクエア・ソニーギャラリー・ペンタックスギャラリーなどがあります。どこも公募の形式を取っており、だいたい年に2回の審査に通過すると、その10ヶ月後くらいに展示を行うことが出来ます。メーカー系の良い所は何より場所代がかからないことと来場者が定期的に来てくれることです。サポートは基本的に場所のみでプリントや額縁、設営費などは自分負担となっている所が殆どです。
候補2:スモールギャラリー
次に思い浮かぶのは一般的なレンタルギャラリーです。都内や地方など様々な所にありますが、その善し悪しをパッと見分けるのは難しいようにも思います。まずは一つ目の善し悪しの大きな線引きは「ただの場所貸し」か、あるいは「展示を考えている画廊」なのか、というところです。キャリアを考えても展示の方法や今後の展開を考えてくれる後者がベターだと思います。前者でも、あまりに立地がよいギャラリーなどはサポート無しでもレンタル代を払う価値もあるかもしれません。なおビハインドザギャラリー神楽坂は、写真と芸術を真剣に考えているところだと思います。
候補3:カフェなどのスペース
あまりお勧めいたしません。というのも来場者は作品を純粋に見に来る人では無いからです。また作品を見たい人にとってはワンドリンクやワンフード、チャージなどが行きづらい理由になってしまいます。中にはカフェをしているけれどもお客さんが少ないから、壁を貸すことで来場者を増やそうと考えているオーナーも少なくありません。純粋に作品を見る場所を選びたいものです。
候補4:公共施設などの間借り
地方の公民館や校外の市民ギャラリーなるものを時々見かけます。見ると入るようにしているのですが、第一印象は壁の汚れが気になる、ことが多いです。不特定多数が無償で使用できる所もあるので当然かもしれませんが、あまり管理は行き届いていないところも見受けられます。一方で、リニューアルされた施設や、美術館の一部のレンタルスペースなどは有料で借りられるものもあり、魅力的な所も少なくありません。中には駅構内の壁を展示用に貸し出している駅などもありますので色々とゆかりのあるエリアなどで調べてみるのもお勧めです。
STEP.4
展示方法の検討
場所が決まると点数が決まります
展示を予定する場所は多くのことを決めてくれます。第一に「雰囲気」が大切です。白い空間なのか黒い空間か、あるいは明るいのか暗いのか、立地も全体の印象に大きく影響してくるでしょう。人通りが多いところでは来場者数が見込めますが、ゆっくりと作品をみるというプライベート感は薄れます。じっくり見せたい場合には郊外の一軒家ギャラリーなども候補に入るかもしれません。そして何より展示する場所(箱)の大きさが決まることで、おおよその展示点数が決定します。場所に合わせてウィンドゥを飾る作品は「このサイズくらいで」と指定があるかもしれません。予約完了の前に確認できることは聞いてみるのも良い手です。
場所が決まると作品サイズが決まります
箱の大きさからおおよその作品数が分かってきたと思います。その次は空間に合わせた作品サイズの検討になります。こちらも見せる点数が25点くらいと決まれば、空間に25点分の作品を想定してみるとおおよそのサイズ感が割り出せると思います。
点数とサイズが決まればいよいよ制作?
作品のサイズや点数が出そろったところでいよいよ出力?もちろんそれでも構いませんが、最終的に本当にその場所にその点数が入るのかを再度検討することをお勧めします。作家さんのお持ちになる「展示設計図」がそのままひとつの数字の間違いもなく展示が完成する、というのはむしろ少数派です。この展示設計図は別のページでまた詳しく説明させていただこうと思います。
キャプションや挨拶パネルも忘れずに
作品の他に平行して製作するものがあります。挨拶パネルやプロフィールパネル、キャプションなどは直前になって焦る前に用意しましょう。他にも作品を販売しているか聞かれた際にお渡しするようなプライスリストや、販売物があるなら領収証や印鑑、DMや芳名帳なども含め様々な物が必要になってきます。中でもキャプションやDMについてはそれぞれ詳しく別のページで説明をしていますのでご覧下さい。
展示の設計図はとても重要です。初めの段階で詰めが甘いと、現場で一点削らなければ飾れない、などのミスに繋がってしまうことが多々あります。また展示設営の際に、設計図がなければ手際よく進まずに余計な時間がかかってしまうことも多く見受けられます。
STEP.5
作品の製作とプリント方法
基本的な考えは自分での出力
基本的には自分で出力することをお勧めします。それはフィルムの時代も今も同じ考えですが「世に出すまで手塩にかける」ような意味合いが強くあると考えています。またコスト面でもメリットがあり、簡単に出力ができるようになることで継続的な作品製作につながり、さらには販売した際にスムーズに販売物の制作が出来ることも魅力です。※自分で出力する際の方法は「展示プリントの作り方」のページで説明します。
数種類のプリント方法
自分でプリントする以外にも色々な方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。基本的には自分でする場合のメリットが最も大きいと考えて居ます。
- #1:自分でプリント
メリット:選べる用紙が豊富・スピーディに対応できる・大きいサイズが安い
デメリット:慣れるまで意外とトラブルになる・初期投資が必要・小さいサイズのプリントが高くつく - #2:ラボに頼む
メリット:クオリティが安定する・簡単・額装までノンストップ対応も出来る所も
デメリット:全体的に高い・大きいサイズは極めて高い・日数がかかる - #3:量販店他に頼む
メリット:小さいサイズが極めて安い・早い
デメリット:品質があまりよくない・頼む度に差がでる・用紙が選べない - #4:レンタルラボを借りる
メリット使い慣れたPCからプリント可・用紙が持ち込める・上手に使えば安い
デメリット:入会費年会費がかかる・慣れないと時間ばかりかかる・スケジュールが意外と空いてない - #5:友人に頼む
メリット知人の能力にもよるがアドバイスや経験も含め良い方向に行くこともしばしば
デメリット:金額のやり取りが煩雑で相手によって少しリスクがある
決まった作品サイズから使用できる用紙を検討する
「用紙にこだわる」というのはセルフプリントの特権です。ただしサイズによって使える用紙の候補が限られてきます。一般的には小さいものほど種類が豊富で、大きい物ほど種類が限られてきます。例えば横幅1.5mのものを造ろうと思うと選択肢は3〜5種類程度しかありません。
お勧めの用紙選び
もちろん作品の雰囲気や自分の好みから選ぶのが一番です。例えば色を鮮やかに出したほうが美しい場合は光沢紙、シックな雰囲気ならマット紙、絵画調ならばファインアート紙といった3種類にプリント用紙は大別できます。ここでひとつ考慮すべきは、展示をする時の形式です。額縁にいれる場合は「アクリル(ガラス)」が額に入るため、実際の写真はアクリルを通してみることになります。そのため、マット紙でも思ったより光沢感がでるなど、想像とは違った仕上がりになることもあるため、最初から全点を出力せずに必ず1点額装された完成品を造ってみてから、残りの制作にかかるようにしましょう。
STEP.6
額装の選び方
実際には前述したプリント方法とは平行して検討することになります。例えばアクリル圧着(フォトアクリル)という方法で展示をしようと思えば、用紙が平滑であることが条件になるのでマット紙やファインアート紙では加工自体が出来ません。額縁は様々な種類がありますが、こちらは大別するとまずは3つ種類、「額装(フレームに入れる)」か「パネル貼(簡易加工)」、「貼りっぱなし」に分けられると思います。
数種類の仕上げ方法
額装するか、そのほかの仕上げ方で展示をするかは作品性や作家さんの考え方や、現実的には予算でも大きく違ってきます。下記に簡単に仕上げの種類をまとめましたが、詳しくは別ページの「額装の選び方」に記載しています。
- Frame1:木製額(ウッドフレーム)
一言でウッドフレームとまとめるには多種多様な額縁があります。写真が綺麗に見える木製額は、一般的にはナラ材、ブナ材、サクラなどの木目が目立ちすぎずスマートなものが好まれます。仕上げはメープル、ホワイトアッシュ、ブラックなどがありますが、写真の色を引き立たせるためにもフレームの色はシンプルに仕上げる方が無難でしょう。 - Frame2:アルミ額(アルミフレーム)
ウッドフレームに対して安価なのも魅力です。アルミフレームでも種類はあり、しっかりとしていてたわまないものや、表面がつるっとしたメッキ加工、表面がスリアルミのようにサンドブラスト加工されたもの、あるいはホワイトやブラックの仕上げでも塗り重ねている高級品など様々です。アルミフレームは耐久性も高くシンプルなため長く使っていけるのも特徴です。 - Frame3:絵画額(インテリアフレーム)
ウッドフレームに装飾が付いているものを指します。まずは写真用の額縁とは違ったサイズの仕様ですので、35mm判フィルムそのままで検討すると作品のサイズと額縁のサイズが合わずにマットが大きくなってしまうことも多くあります。装飾過多のフレームも多いため作品が負けないようにプリントサイズを出来るだけ大きくするなど対処が必要です。 - Pannel1:パネル貼り(木パネ)
最も安価な方法です。木製パネルは1メートルを超えるような大きな作品に対して行われることも時々あります慣れてくると個人で作家さんがパネル貼りから周囲を加工する水貼りまでを御自身で行うことも可能です。 - Pannel12:スチレンパネル貼り(ハレパネ)
こちらも安価でそれなりに見えるためによく使われます。初心者でも綺麗に貼れるようになるのが早いため(2〜3枚の練習でそれなりになります)、駆け出しの頃などにも多く取られる方法です。また一週間のみ公共スペースで展示をするなど撤収後に在庫を抱えたくない場合でも有効です。 - Pannel3:ゲータフォーム(ゲータ加工)
ハレパネに耐久性を持たせたものと考えて良いと思います。カラーはホワイトとブラック(グレー)の2色が一般的で、仕上がりも美しくゲタを履かせれば(壁から作品を浮かせれば)かなり見栄えするものになります。 - Pannel4:アルミパネル(アルポリック)
ゲータフォームにさらに耐久性を持たせたものです。ハレパネ部分がアルミになることで高品質になりました。一番の特徴はつなぎ合わせが得意なことで、例えば1mのアルポリックを4枚つくれば2m角の作品に仕上がり、そのつなぎ目は全く見えなくなります。(実際は4分割ですがかなり近寄らないと分かりません) - Pannel5:アクリル圧着(フォトアクリル)
作品の上に薄く接着剤を塗布してアクリルを圧着させる方法です。透明感のある作品などに適しており、その仕上がりに初めは感動します。が、巡回の展示などではアルミに比べて角が欠けやすく、使い回しも効かないために将来的な展望や販売の際にも注意が必要です。アクリルの厚さは3mmと5mmを選択し、アクリルの品質もキャストか押し出しかを選ぶなど多少種類があります。また最近ではアクリルに直接インクジェットプリントをするアクリルダイレクトプリントという方法もあります。 - Pannel6:キャンバス貼り
インクジェットプリンターが出来たことで特殊用紙のひとつにキャンバスペーパーが出来るようになりました。このキャンバスペーパーを絵画の木パネに上手く付けてあげることでキャンバスプリントが完成します。表面をグロス加工があるプリンターの方が劣化が抑えられるのでお勧めです。 - Print1:用紙そのまま
ペーパーのクオリティや質感がそのまま分かるのが魅力ですが、展示映えはなかなか望めません。特殊プリントのひとつ「アルミプリント」などができればそのまま展示しても劣化なく美しく仕上がります。 - Print2:用紙+ゲタ
作品に木製パネルを裏に付けてあげれば、壁から浮かび上がるためそれなりに見えます。立体感と浮遊感がでる仕上がりのため、その場限りになりますが、用紙やゲタの張り方など工夫次第で美しく見えるようにも出来ます。 - Print3:用紙吊るし
用紙の上下にちょっとした棒などを使うことでたわみがなくなります。あるいはペーパーの4隅を重くしてあげれば天釣りで空間に浮いているようにも仕上げられます。壁に打ち付けるという呪縛から解放される方法としても有効です。 - Print4:用紙裏打ち
用紙そのままではなく裏打ちをして強くすることで加工できる幅を広げます。ゲタを履かせるだけでなく、穴を空けて釘にかけてみたり、少しRをつけてロール状にしてみたり創作次第では見栄えします。 - Print5:その他
流木を使ったり、紐一本で吊してクルクルと回る仕様にしたり、そのまま床に置いたり・・・段々と正統派の仕上げから離れることでインスタレーションに近い雰囲気が出てきます。
額縁系
パネル系
貼りっぱなし系
額縁や仕上げはどこで行う?
大きく分けて「額装・パネル貼・プリント貼りっぱなし」の3種類に分けましたが、この中で自分ひとりで完結するのは貼りっぱなしと一部のパネル貼りくらいです。では他にオーダーをするときはどういったところに頼むのがよいのでしょうか。
額縁はオーダーか既製額かに分かれる
額縁はまず、既製品を買うか、オーダーで好みのサイズを発注するかです。お店にも寄りますが、オーダーはまずとても時間に余裕を見てください。基本的には3週間程度は短くともかかる認識でいましょう。また既製品でも在庫数が確保できるか分かりませんので、倉庫在庫取り寄せまで視野にいれて探す必要があります。額縁だけでも先に揃えるという方法もひとつ安心感があります。
額縁と言っても「額」だけでは完結しません
額縁と一般的に私たちが考えるのは「額(外枠)・裏板・マット(白い厚紙の枠)・アクリル(またはガラス)・黄袋・箱」がセットになったものです。しっかりした店舗であれば、これをそれぞれ見積もっていくことになります。費用はサイズが大きければ大きいほど高くなりますが、基本的な認識ではA3くらいのサイズで木製が1セット1万円程度、アルミが5000円程度と見積もっていくとおおよその検討が付くと思います。
まずは既製額縁から検討する
既製品は数を揃えているので街の額屋さんではなく大型店舗が候補になります。都内でしたら、「世界堂・伊東屋・ヨドバシカメラ」などでほぼ網羅されると思います。逆にこの3店舗を回って好みの物が店頭になければ既製額ではなく必然的にオーダーフレームが視野に入ってきます。
- 世界堂(新宿店4階・東京都新宿区新宿3-1-1):最も既製額縁の種類が豊富に揃っています。絵画額中心ですが写真用の額もあり、シンプルで汎用的なものまで見ることができます。
- 伊東屋(銀座新館地下1階・東京都中央区銀座2-7-15):移店してからほとんどオーダー中心になっていますがとても参考になります。
- ヨドバシカメラ(新宿西口カメラ館地下1階・東京都新宿区西新宿1-11-1):高級な額縁は置いていませんが、アルミフレームの品揃えは都内屈指のレベルです。ここで型番を確認して、店舗にあわせてヨドバシドットコムで 在庫数を確認しておくのがお勧めです。
- ラーソンジュール(東京都港区高輪3丁目4−1):日本で最も額縁を卸している会社です。殆どの大きな店舗や文具屋、インテリアショップにはここの額が使われています。卸ろしのため直接の店舗はなく、個人販売は行っていません。膨大な種類を記載したカタログから営業と折衝して価格や仕様を決めて発注する形式です。弊社でも取引口座を開いているので展示の際にはご相談可能です。
オーダーフレームの注意点など
額縁をオーダーするのはとても楽しい作業です。一枚試し刷りのプリントをぜひ持参しましょう。そのプリントに額を当てながら、どういう仕様が最も作品を引き立たせてくれるかを考えるのはワクワクするものです。サンプルが豊富なのは
- 世界堂(新宿店4階・東京都新宿区新宿3-1-1):既製額に続き世界堂はオーダーでもお勧めです。価格と品質のバランスが初めての方にも良く、オーダーにも専門のスタッフが丁寧にサポートしてくれます。
- 伊東屋(銀座新館地下1階・東京都中央区銀座2-7-15):シンプルな木製額などは高品質のものを揃えています。世界堂では物足りないという方は一度覗いてみると、木の品質や塗り、仕上げなどもひと味違ったものに触れることができます。
- PGI(東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F):都内初の写真ギャラリーと言われています。芝浦から東麻布のギャラリー街に店舗を移しました。ハイレベルな額装を行っています。
- フラットラボ(東京都港区海岸3-18-12):以前は新宿でプリント作業を行っていたが現在はamanaの買収を受けて海岸に移転。高品質を謳い、額装もサポートしています。
- HCL(東京都渋谷区神宮前3-41-6):本社大阪、都内各地に店舗がありますが、弊社が使わせていただいているのは神宮前のオフィスです。プリントがメインのためプリントから額装までワンストップで対応が可能です。
- フレームマン(東京都墨田区両国3-10-4):額装や写真加工と言えばフレームマンと業界ではNO1の存在。各メーカーギャラリーもここに頼んでいる。代々世襲の家族企業が特徴。オフィスはやや遠めで両国にある。近くにはピクトリコのプリントラボもあり提携している。
額の中に入れる額装作業をサポート
ビハインドザギャラリー神楽坂では、既製額やオーダーフレームに作品を入れる作業(額装)やマットに入れる作業(マット加工)などのサポートをさせて頂きます。展示をお考えの方には、日程が空いていればギャラリー内で作品の額装スペースや無酸性テープなどの資材を無償で貸し出しいたします。
STEP.7
展示の設営について
設営作業のことを「展示」と言います
プロでも知らない人が多い「展示」という言葉、実はこれは展示設営作業を指します。それに対して本番の展示会スタートは「本展示」と言われます。この展示設営に欠かせないのがstep2でお知らせした「展示設計図」です。前もって設計図を確認することで「必要なクギ」や「ピン」、「ドッコ(雄雌の掛具)」などが決まってきます。ギャラリーによって釘の大きさに制限があるなど規程もありますので確認してみましょう。
設営には時間に余裕を持ちましょう
設計図通り完璧に設営が完了することはむしろ少数です。初めてで問題なく設営が終了できるとはあまり考えないほうが良いでしょう。展示設営の経験者やギャラリーからサポートを仰ぐ方が無難です。展示の設営に関してはまた別途詳しくご説明します。
巡回展示は注意が必要です
個展のために額縁を造るなどした場合は、折角だから地元のギャラリーなどにも巡回展示を行いたいという気持ちが出たりするものです。場所を確保してから大変なのが、「輸送の問題」です。近距離で車一台に乗るくらいであれば人力で行けるので問題ありませんが、例えば全国巡回となると「車一台」の手配でも距離によっては10万円近くかかる場合も多々あります。巡回展示をする際には、宅急便(現在ヤマト運輸で160サイズ・ゆうパックで170サイズがMAX)で輸送できるサイズに納まるように造るというのも1つのテクニックです。仮に1メートルくらいの作品を作りたいと思ったら、「1000mm x 600mm x 30mm」だと一点でも宅急便で送ることが出来ません。1メートル前後で構わないなら「900mm x 530mm x 30mm」であれば宅急便で送ることが出来ます。巡回展示の際にはこの100mmの違いが大きな差になりますのでコストバランスを見極めて発注していくようにしましょう。
STEP.8
PR・集客について
来場者は「その展示を見るために来てくれる人」と「何となく来てくれた人」です。ここでは前者の展示を見るために来てくれる人をどう増やすかについてお知らせします。展示設営よりも前に始めることですが、説明が前後すると分かりづらいので後述しました。
PR活動:ウェブページのランディング
ウェブでの広報活動は大きな影響力を持ちます。ギャラリー公式サイトでのスケジュールなどを記したページを作ってもらったら、そのページに誘導するようにSNSなどで情報を広げていきましょう。ウェブメディアにも打診することで掲載を促してもらうのも手です。
PR活動:ダイレクトメールの作成
何と言っても必要になるのはDMの存在です。ウェブが力のある現在でもギャラリー近くの店舗に設置してもらったり、同業のギャラリーに置いてもらったり、もちろん直接知人に送るのも忘れないようにします。DM設置を始めるのは1ヶ月くらい前から、また郵送でのお知らせは10日から一週間前程度を目安に行うようにします。なお雑誌社などのメディアには2〜3ヶ月前の送付が好ましいでしょう。
PR活動:プレスリリースの発信
大きな展示や美術館の企画展などは必ずPR(プレスリリース)を発信します。基本的には一斉配信で数千社にばらまく形式が取られています。ドリームニュースやPRtimesなど配信会社を通して、メディア各社に行き渡るようにするのが一般的です。ただし費用がそれなりにかかり、10000〜50000円程度見積もる必要があります。またリリースの書き方は別でまとめようと思っています。
1000人にアプローチ
ビハインドザギャラリー神楽坂ではメルマガへの登録者が現在800人を越えています。SNSアカウントへのフォローはまだ500人程度ですが、展示を行っていただく際には一斉に1000人にアプローチしますので、来場者は見込めると思っています。実際に日に200人近い来場者を記録したこともありますので、展示内容次第では大きな結果に繋がるかもしれません。
STEP.9
本展示のはじまり
展示の期間は多くは一週間です。場合によっては土日を2回にして9日間になることもしばしば。経験的にですが、これが2週間の場合は、仮に作家が毎日在廊しようと思うと結構な労力を必要とします。まず初めは1週間程度で考えるのがお勧めです。
本展示は在廊がキホン
来場者と挨拶が出来ることで仕事や新しいアイデアが舞い込むことも少なくありません。実際に写真展をしたことで作品集出版の話が持ち上がることもありました。また知人が来た際にも「作家さんはいらっしゃいますか」というご質問を度々受けますので、久しぶりに顔を合わせるきっかけにもなるでしょう。
トークイベントなどのススメ
「作家は語らず、作品が語る」というのは昔の話かもしれません。できれば私はトークイベントをお勧めしています。人の前で話すことに抵抗や不慣れな所もある方も多いと思いますが、作品性を知ってもらう、という以上に、人前出話すという事自体が作家の可能性を広げてくれると思っているからです。作家には作品作りだけでなく、講演や講座などを担当する話が入ってくるものです。その時に未経験であるよりも、作品についてしっかりと話したことのある経歴というのは何かと活きてきます。
販売物のススメ
何か販売できるものを作るのがお勧めです。自分の作品が商品になる喜びがひとつ、もうひとつは見に来てくれた人の満足感に繋がるということです。「良い展示だった」あるいは「これからも頑張って」という気持ちから、何か買って帰りたいと思ってもらえることも少なくありません。ビハインドザギャラリーではその販売物の最たる物が写真集だと思っています。
STEP.10
本展示での学び
写真展は純粋に嬉しいことです。「おめでとう」と言われること、自分の作品がギャラリーに並ぶことで「作品」として等身大の自分を見つめ直せること。そんな本展示での学ぶことは少なくありません。
他人の意見を聞くことができる
自分のベストと思っている写真ではないものが一番人気になるかもしれません。あるいは販売をすれば意外なものが売れたりします。訪れる人の意見は自分へのアドバイスです。作品にフィードバックを重ねることで、これは大事、これは違う、など自分でふるいにかけることで作家としての研鑽を積むことができるでしょう。
人に影響を与える喜びを知る
自分の作品を見て涙する人がいる。大げさかもしれませんが、芸術には人を、世論を、社会を動かす力があります。それは歴史が証明しているので疑いようがありません。例えば作品を見ている人が、「元気をもらいました」というのも大きな影響力です。初めは小さなムーブメントかもしれませんが、いずれ大きな波が生まれるかもしれません。これは展示の醍醐味のひとつと思って良いと思います。
STEP.11
展示を受けて
写真集で自分の作品を見つめ直す機会になりました。もちろんポートフォリオでも出来たことですが、直接の意見はより作家の心に響いたはずです。その展示を受けて何に活かしていくべきでしょうか。
写真集に昇華させる
初めのブック制作のステップで書きましたが、1枚なら単写真、3枚なら組写真、そしてテーマを持ったブックになり、展示を行って完成されました。その完成したものを、さらに100枚に増やして纏め上げれば写真集になります。写真集(作品集の書籍)は作家として最も価値のあるものです。いくらデジタル化されても、書籍としての作品集はなくならないと思っています。
写真集を出版する方法を考える
作家の大事な一歩となる写真集、それは個人的なブック制作から社会的な出版というアプローチへの変化です。ただ現在大手出版社から作品集を発売させるのは至難の業です。社会的には「売れる物=素晴らしい物」という経済的な尺度が根付いているため、いくら美しい作品でもすぐに出版という話にはなりません。そこでビハインドザギャラリー神楽坂では作家と協力して作品集を出版し、売り切ることで作家とギャラリーの双方が負担のないアプローチをしています。おそらく他に類を見ない方法だと思います。写真集出版については別ページにてまとめています。
作家の手売りで550冊を完売
2018年に弊社の著書『小笠原のすべて』を販売開始、書店の流通とは別にギャラリーより直接の販売を始め、1年で550冊(約100万円)を売り上げました。その経験を元に作家に実質負担ゼロで出版プロデュースを行っています。
STEP.12
次の作品制作へのサイクル
写真展から写真集へ。あるいは写真展での写真集販売を成功させて。これからは少しずつステップアップをしていくためにスタート地点に戻ります。ブックをより完成度の高いものに、あるいは新たなテーマをまとめに・・・結果として目指すのは冒頭に書きましたPEPE(ポートフォリオ・展示・出版・展示・・・)の好循環です。
作品製作は数種類を同時進行で行う
このサイクルは1〜2年に1テーマくらいで行えると素晴らしいですが、なかなかそのペースで行える作家さんは少数です。一方で多くの作家さんにとっては数年に一度、満を持して行うというのがテーマの完成度を保つ方法でもあります。その中で少しずつサイクルをあげていく方法は、ひとつのブック制作に没頭するよりも、複数のテーマを同時進行させることです。1つのテーマよりも2つ以上のテーマを考えながら、少しずつ積み重ねていきましょう。もしかしたら2つのテーマが互いに良い作用を生んでくれるかもしれません。
最後に
世の中には多くのギャラリーがあります。その中でビハインドザギャラリー神楽坂のウェブを見ていただいたことは何かのご縁かもしれません。たまたま見かけただけかもしれませんが、もし真剣にアートを考えているギャラリーで作家の足がかりをと考えていたら是非御連絡をお待ちしています。